陽気なギャングの日常と襲撃

『陽気なギャングの日常と襲撃』
伊坂幸太郎 著 (祥伝社 NON NOBEL)

最近、ノリにノッテいる伊坂幸太郎の新刊(といっても出たのちょい前だけど)。前作『陽気なギャングが地球を回す』は綺麗に終っており、続編が出るとは思っていなかったので、嬉しい誤算であった。一章は各人を探偵役にした「日常の謎」系列の話で、元々一話完結の短編だったこともありそれぞれが独立な物語としてそつなくまとまっている。でも、伊坂幸太郎の小説に慣れていると、最終的には全て繋がって来るのだろうと当然期待され、今回もそれを裏切らず二章以降で絡み合いさりげなく出した逸話を意外なところで活用してくる。クライマックスの騙しはあまりに杜撰で荒唐無稽だし、一番描写が厳しい部分は詳細を具にしないという欠点はあるが、その全体の構成の巧さ、そして何より会話の妙とテンポの良さがそれを補って余りあり、最後まで一気に読ませてくれる。
ドラえもんの秘密道具扱いの田中は作者も気になっているらしく

「田中に頼んでもいいんだが、田中の機嫌次第では、時間がかかるかもしれない。それにいつも田中の情報や道具に頼っていると、またか、と思われるかもしれない」と成瀬が眉を上げる。
「誰に、思われるんだ!」響野は思わず、声を高くしてしまう。
「俺たちの作戦は、全部田中任せで、田中がいれば何でもできるんじゃないか、と見透かされるかもしれない」
「だから、誰にだ!」

というメタフィクショナル(?)な突込みがあるのが実は一番笑ったところ。

ラストシーンは前回のレベルを期待するのは無理かもしれないが、ちょっと残念だったかな。