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村上文学WS

3月下旬に国際ワークショップ 「世界は村上春樹をどう読むか?」があったわけだが、ワークショップ自体にはいけなかったので、その後雑誌などに発表された関係文章などのメモ書き。 新潮 5月号 (2006) リチャード・パワーズ『ハルキ・ムラカミ−広域分散−自己…

陽気なギャングの日常と襲撃

『陽気なギャングの日常と襲撃』 伊坂幸太郎 著 (祥伝社 NON NOBEL)最近、ノリにノッテいる伊坂幸太郎の新刊(といっても出たのちょい前だけど)。前作『陽気なギャングが地球を回す』は綺麗に終っており、続編が出るとは思っていなかったので、嬉しい誤算で…

「正常さ」という病い

『「正常さ」という病い』 アルノ・グリューン著、馬場謙一+正路妙子 訳 (青土社絶版)安冨歩氏の『複雑さを生きる』という複雑系を用いて広範な事柄を分析しながらも、具体的な実効策までも示してしまっている恐るべき著作の中で、アルノ・グリューンにつ…

オメガ

大学に入る前に数学基礎論の講義を一週間ほど受けたことがある。公理論的集合論からゲーデルの不完全性定理までを教えるもので、当然、僕の様な頭の出来では理解するなどということは出来ず、ただ眼前で繰り広げられる数学の豊穣さに魅入られただけである。…

Search engine system clash

『サーチエンジン・システム・クラッシュ』 文春文庫 宮沢 章夫 (著) エッセイは読んだことがあった宮沢章夫氏の芥川賞受賞作。文庫落ちしたので、この機会に。 表題作は、何かを探そうとすると違うものが見つかってしまい、巻き込まれていくという話。「生…

Quintana roo

『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』 ハヤカワ文庫 FT ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア (著) 浅倉 久志 (訳)ティプトリーの幻想小説。短篇で、一気に読める。民話の形態をとっていながらSF化させたり、最期の巨大なゴミで出来た女性はビジ…

極西文学論

『極西文学論』 晶文社 仲俣暁生(著)村上春樹を主軸に舞城王太郎、吉田修一、阿部和重、保坂和志、星野智幸を論じた文学論。僕は村上・舞城・吉田・阿部・星野はそれなりに読んでいるが、保坂は一作として読んでいない。 読んでいた最初の方で、村上春樹を「…

Liszt & Chopin

『パリのヴィルトゥオーゾたち ショパンとリストの時代』 ショパン ヴィルヘルム・フォン レンツ (著)、中野 真帆子(訳)リストとショパンに師事したレンツによる、二人についての回想録。 「俺が二人にウェーバーを教えたんだ」とか、自慢がさりげなく入っ…

 愚か者死すべし

「愚か者死すべし」 ハヤワカ書房 原 寮(著)ヤクザと警察には反目しながら一目おかれ、登場人物全てに敬意をもたれる現実には絶対にいない探偵の格好良さを追求したシリーズである。 複数の事件を並列で走らせていて、それによって事態が複雑かするが、其…

不夜城完結編

『長恨歌 不夜城完結編』 角川書店 馳 星周 (著)随分久しぶりに馳星周 の小説を読んだ。何処を切っても同じといわれた馳星周 であるが、エルロイっぽさや暴力志向が為りを潜めて、少しは変わったのだと思う。 しかし、キャラクターに魅力がない。劉健一も薄…

Landau

『物理学者ランダウ スターリン体制への叛逆』 みすず書房 佐々木力・山本義隆・桑野 隆(編訳)物理を勉強した人間が必ず世話になるランダウ・リフシッツの理論物理学教程、そして様々な研究に出てくるランダウの名前。彼が1938年に逮捕され、一年間の牢獄…

Crab bucket USA

『USA カニバケツ 超大国の三面記事的真実』 太田出版 町山智浩(著)前作の『底抜け合衆国』は、ブッシュ政権とイラク戦争に焦点が当てられていたが、今回はそれ以外のエッセイ・記事をまとめたもの。相変わらずそのネタの選び方と料理の仕方の面白さには脱…

英語の企み、仏語の戯れ

『英語のたくらみ、フランス語のたわむれ』 東京大学出版会 斎藤 兆史・野崎 歓(著)野崎 歓の方は、その訳書(トゥーサン、ソレルス、ウェルベック)にかなり親しんでいるが、斎藤 兆史の方は全然知りませんでした(これを読んでロッジの『技巧』の訳者の…

IMPROVISATION

『インプロヴィゼーション 即興演奏の彼方へ』 工作舎 デレク・ベイリー(著)、竹田賢一・木幡和枝・斉藤栄一(訳)菊地ゼミで参考文献としてあげられていた即興演奏の本。前半は各音楽(インド音楽・フラメンコ・バロック音楽・教会オルガン音楽・ロック・ジ…

Solaris

『ソラリス』 国書刊行会 スタニスワム・レム(著) 沼野充義(訳)買ってから放置すること一ヶ月、読み始めて中断すること一ヶ月で、ようよう読み終わった。読めなかった理由は、個人的な理由に属するので詳しくは述べないが、読みにくいだとか、つまらない…

DESCARTES' DREAM

『デカルトの夢』 アスキー出版局 フィリップ・J・デービス、ルーベン・ヘルシェ(著) 椋田直子(訳)応用数学(特にコンピュータ関係)をめぐるエッセイ集。ただし出版されたのが1986 年なので、コンピュータ技術に関しては一昔前と思われる内容が多い(Ada …

暗殺の天使

『マラーを殺した女 ―暗殺の天使シャルロット・コルデ』 中央公論社 安達正勝(著) ダヴィッドによる『マラーの死』という実際の死体を前にして描いた(という割には大胆に脚色されているらしいが)絵画のおかげで、随分と有名になっている風呂場で死んでいる…

本との出会い、人との遭遇

『本との出会い、人との遭遇』 右文書院 堀切 直人(著)文芸評論家・堀切 直人が、様々な本及び作家などについての回顧的なエッセイ。錚々たる面々について縦横無尽に語られている。MEMO 大岡昇平は気難しい人。 島尾敏雄は”変質者まがいの男”。赤の他人の…

物語消滅論

『物語消滅論』 角川oneテーマ21 大塚英志(著)なんだかんだとその著作を全て読んでいる気がする大塚英志。物語をコード化できる部分はあると思っていて、それを実地に応用していくのは面白いと思う、って書くと前の著作の感想と同じになってしまう。 物語…

英国博覧記

『ベン・ショットの英国博覧記』 日経BP社 ベン・ショット(著)、野中モモ (訳)英国で出たトリビア集。もう少し読み物的な(『アシモフの雑学コレクション』みたいな)本だと思っていたら、データの羅列って感じで、まったく統一性がなくそこが逆に面白い。日…

百年の誤読

『百年の誤読』 ぴあ 豊崎由美・岡野宏文 (著)100年間にわたるベストセラー書をばっさり斬りまくっている本。 小学4年生の時に、担任教師に薦められて武者小路実篤『友情』読んで、「なんじゃこりゃー」と思ったのだけど、その感想は間違っていなかったので…

Black Machine Music & Galactic Soul

『ブラック・マシン・ミュージック ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノ』 河出書房新社 野田 努(著)ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノを巡る音楽の叙事詩。 抑圧されたゲイの文化として徒花を咲かせたディスコから始まり、DJ 達が音楽に新しい伊吹を…

捧げもの

『gift』 集英社 古川日出男(著)著者初の短編集。全ての作品がある程度のレベルを超えているのが、驚き。まるでチャンのあの驚異の短編集を薄味にして、SF 色を幻想仕立てにしたような味わい。とは誉めすぎ。 ショート・ショートなので、長編の重厚さは無い…