IMPROVISATION

インプロヴィゼーション 即興演奏の彼方へ』 工作舎
デレク・ベイリー(著)、竹田賢一・木幡和枝・斉藤栄一(訳)

菊地ゼミで参考文献としてあげられていた即興演奏の本。前半は各音楽(インド音楽・フラメンコ・バロック音楽・教会オルガン音楽・ロック・ジャズ・現代音楽 および聴衆を如何に意識しているか)の人々にインタビューしたものを纏めたものになっている。そして後半は、如何にデレク・ベイリー自身のフリー・インプロゼーションに関わり、どのようにそれを構築していったかという内容になっている。
各論では、まったく異なるスタイルでの即興演奏に対する態度が見られて面白い。聴衆の扱い方の見解の違い、即興をそれ自体が内包しているインド音楽に、ジャズの(新しい意味での)即興性を失いつつ過去の反復になっている現状分析やら、現代音楽において作曲者が如何に即興的な要素を入れようとしてもの演奏者がクラシックの人だと大変苦労するというクラシックの呪縛がよく見える話や即興と非即興を志す人間の分離の問題など。
ベイリーが拘るのはイディオムの問題であり、それを如何に回避していくかに主点が論じられる。そのためには自分の技術・楽器(本文で道具ではく同盟者と断じられる)を真摯に見つめ解体し、技術の果てにイディオムをなくしていく手法をとっている。なんという強い意思!!
友人にこの本を読んでいる、といったところ、原著の方は版が新しくなっており、2章分追加されているらしい。その一章ではインプロヴィゼーションを長く続けるとそれ自体がイディオムとなるという批判に対しての反論ということである。その批判の方があまりに的を得ていると思うので、屁理屈つけて言い訳しているのだろう、と読んでいないが勝手に思う(友人も本を買っただけで、その章をまだ読んでいないらしい)。