Search engine system clash

サーチエンジン・システム・クラッシュ』 文春文庫
宮沢 章夫 (著)
エッセイは読んだことがあった宮沢章夫氏の芥川賞受賞作。文庫落ちしたので、この機会に。
表題作は、何かを探そうとすると違うものが見つかってしまい、巻き込まれていくという話。「生きているのか死んでいるのかさえ、わからない。その曖昧さに耐えられるか? 」という言葉が象徴しているように、曖昧な迷宮に入り込み、途中で自分の名前すら曖昧になってしまう。現在社会のアイロニーというよりも、一種の不条理小説として楽しんだ。主人公が言葉の意味を考えるにつれゲシュタルト崩壊を起こしそうに成ってしまう描写があるが、エッセイでの常に発言の主体や細かい文脈上の意味を気にしてしまう著者が垣間見れる。

同時収録の『草の上のキューブ』は、最終的に方言がなくなってしまう様にインターネットによる地域性の消失やら、クラッキングによる自分の存在を消そうとする試みなど、発表された時期を考えてもちょっと凡庸かなぁ。あと若者の描き方が説教臭い部分があるというか…。