Solaris

ソラリス国書刊行会
スタニスワム・レム(著) 沼野充義(訳)

買ってから放置すること一ヶ月、読み始めて中断すること一ヶ月で、ようよう読み終わった。読めなかった理由は、個人的な理由に属するので詳しくは述べないが、読みにくいだとか、つまらない小説ではない。むしろ、次の場面を期待して貪るように読める類の小説である。飯田訳の方を読んだのが、何しろ中学生の時なので、ほとんど細かい内容は覚えていなかったが、ソラリスという巨大な海自体が知性体であり、そのファーストコンタクトの着想の仕方に鮮烈な印象をもった記憶がある。今読み直してみると、当時わからず、そしてそれほど気にもともめなかったソラリスの海自体の丹念な描写(これは飯田訳のロシア語版では削られていたせいがあるかもしれない)、そして人間関係に目が行く。僕が判断するのもおこがましいぐらいの傑作でしょう。

一番最後に、レム自身による、ソダーパークの映画に対する苦言が載っていた。あれはSF を期待した人に恋愛モノを見せて、ハッピーエンドと見せかけて凄まじくアンハッピーという、そーいう逆説をやりたかった映画だと思っている。僕はSFマニアのシンガポール人と観たのだが、「映画としては悪くなかったけど、SFじゃないよね」と共通認識に達した。それと原作を今回読み返してみれば、ある意味(原作の主眼であるファーストコンタクトモノであることを抜いた、他のことに注目した場合において)原作に忠実といえば忠実だったのではないかと思う(そういえば映画では、ニュートリノではなくヒッグスを扱っていたっけ。確か。どちらもいい加減だが)。タルコフスキー版は、まさに最初から最期までタルコフスキーの映画であったが。

スタニスワフ・レム選集の嚆矢としてかなり前から国書刊行会の近刊予定として上がっていた本書であるが、順次延ばされて結局1年以上待たされたと思う(ソダーパークの映画版のオフィシャルサイトでは原作(国書刊行会)となっていたぐらいで…)。次巻は早めに出て欲しいもの。2巻は12月刊行予定とかかれているが、本当にでるのでしょうかね?