ハウル

ハウルの動く城』 日本(2004)
監督:宮崎駿

映画というものを熟知しているであろう宮崎監督なので、冒頭の引き込み方、そして中盤までの展開は唖然とするほど上手かった。省略すべきところは大胆に排して、ダイナミカルな動きを見せてのけるのは御家芸である。また、ソフィーの呪いの使い方(詳しく説明はなされていないのだが、内面と外面を一致させるようなものだろう)で、ヒロインの成長を分かりやすくしてしまう演出には恐れ入った。
だが、ストーリー展開、人物の背景、戦争の理由とその展開には、全く配慮がなされておらず、作り方がいい加減であるという印象は否めない。ハウルに至っては、戦争を嫌いながら、積極的にその場に出かけているのは意味不明である。取り立てて、妨害工作のようにも思えないし、またそのようなことをする人道的な人物であるような描き方はされていない。最期は女の子を守ることでアイデンティティを獲得するのは、宮崎アニメの今までをちゃんと踏襲しているが。
特にラストは、ただ放りだしてしまっただけにしか思えなかった。
老人の描き方に拘っているのは、監督の現状の実感かな。